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福島県立医科大学 消化管外科学講座

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食道癌

食道癌について

食道は細長い管状の臓器です。喉から腹部まで存在し、周囲には肺・気管・胸部大動脈・心臓・脊椎など様々な臓器に囲まれています。食道癌はこの食道に発生する悪性腫瘍です。食道癌は放置すれば、大きくなり周囲の臓器に浸潤したり(癌細胞が次第に周囲の内臓に入り込み、拡大していくこと)、リンパ節や肺・肝臓などの臓器に転移したり(がん細胞が最初に発生した場所から、血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパ液の流れに乗って別の臓器や器官へ移動し、そこでふえること)することにより最終的には生命に危険を及ぼします。
食道癌は発生した部位により頸部食道癌、胸部食道癌、腹部食道癌に分けられますが、胸部食道癌が80%以上を占めます。

食道癌の治療

食道癌の治療は 「内視鏡的治療」、「手術療法」、「化学療法(抗がん剤治療)」、「放射線療法」に大別され、時にはこれらを組み合わせて治療が行われることもあります。内視鏡的治療は消化器内科医、手術療法は外科医、放射線療法は放射線治療科医によって行われます。このように聞くと、どの科を受診するかによって治療方針が変わってしまうとお思いになられる方もおられると思いますが、当院ではCancer Board(内科医、外科医、放射線科医、腫瘍内科医による、患者様の状態把握および治療方針を決定するためのカンファレンス)を定期的に開催しており、たとえば外科に紹介となってもCancer Boardでの話し合いの結果、内視鏡的治療の方が好ましいと判断された場合にはその後の治療は消化器内科で行うことになります。

内視鏡的治療 ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)

リンパ節転移の危険が非常に小さい早期食道癌に対して行われます。手術とは異なり、体の表面には傷がつかず、非常に低侵襲(からだの負担の少ない)の治療です。内視鏡(胃カメラ)で食道癌を含めた粘膜を切除します。切除した食道癌組織が、病理組織検査(顕微鏡で病気の状態を正確に診断すること)で周囲へのリンパ節転移の可能性があると診断された場合には手術の適応となることがあります。

手術療法

胸部食道癌に対する標準的な手術は「食道亜全摘術」です。この手術では癌の存在する食道と、転移の可能性のあるリンパ節を一緒に体から取り除きます。胸部食道癌は胸部のリンパ節だけでなく、腹部や頸部のリンパ節にも転移を来しやすい癌です。このため腹部と頸部のリンパ節も手術で取り除きます。その後、通常は胃を細長い管状に形成(胃管とよびます)し、頸部までこれを引きあげて残っている食道とつなぎます。このような理由で食道亜全摘術では開胸操作(通常は右側の胸を開きます)、開腹操作(お腹を開きます)および頸部操作(頸部にも傷ができます)が必要となり、体に対する侵襲(ダメージ)が大きい手術となります。

日本消化器外科学会 HPより転載

この体のダメージを軽減することで、術後の合併症(手術や検査などの後,それらがもとになって起こることがある病気)の頻度を下げたり、早期回復・早期退院を目的に、当科では以前より鏡視下手術を導入しています。鏡視下手術は、小さな傷から胸やお腹に内視鏡を入れ、高精細モニターを見ながら行う手術です。開胸・開腹手術と比較して傷が小さいので痛みがすくなく、早期の退院が可能となります。胸の操作は完全に鏡視下で行い、お腹の操作はHALS(hand-assisted laparoscopic surgery)で行います。HALSは7cm程度の小さい傷から執刀医の片手のみをお腹にいれて、もう片方の手で鏡視下に手術を行う方法です。片手をお腹に入れることで、再建に用いる胃を傷つけないように手で優しく操作することができます。

胸腔鏡下食道亜全摘術
  • 術中風景
  • HALSによる腹部操作
  • 胸腔鏡下手術創
  • 開胸手術創
  • HALSによる手術創
  • 開腹手術創

ある程度進行した食道癌の場合には手術前に化学療法(抗がん剤治療)を行ってから手術を行う場合があり、これを術前化学療法と呼びます。以前は手術の後に抗癌剤治療を行っていましたが、臨床試験(JCOG9907試験)の結果、術後よりも術前に抗がん剤治療を行った方が、その後の生存率が良好であり、再発率も低いことが証明されたため、現在は術前化学療法が標準治療となっています。術前化学療法を行う場合、治療方針が決まってから手術までに約2ヶ月程度の期間を要します。できるだけ早く手術をしてほしいと考える方が多いと思いますが、このような理由からですので、ご心配されないでください。

       Ando N et.al Ann Surg Oncol. 2012 Jan;19(1):68-74. より引用

化学放射線療法

化学放射線療法は体に傷のつかない治療ですが、治療成績は手術よりも劣ります。切除可能な食道癌の治療は切除が基本です。ご高齢で重度の併存症をお持ちの患者様には、十分なリスク評価を行い、手術に耐えられないと判断した場合には化学放射線療法を行うこともあります。

当科は食道癌手術療法に非常に力を注いでおり、福島県の食道癌治療における基幹病院として県内外の患者様に治療を行っております。日本食道学会が定める食道外科専門医を有し、食道外科専門医認定施設(東北地方で6施設のみ)として登録されております。

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