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福島県立医科大学 消化管外科学講座

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留学体験記2017

福島県立医科大学 消化管外科学講座 菅家康之(2010年卒)

はじめに

私は現在、Laboratory of human carcinogenesis(LHC), National Cancer Institute, National Institutes of Healthに研究留学をさせていただいております。LHCは竹之下理事長から脈々と続く伝統の留学先であり、数々の諸先輩方が世界最先端の医学研究を通して研鑽されきました。栄誉なことに留学の機会を賜り、挑戦させていただいていることを心から感謝いたしております。竹之下先生、河野先生はじめ多くの先輩、同期、後輩の先生方、スタッフの方々に深く御礼を申し上げます。どうもありがとうございます。この度は誠に稚拙ではございますが、留学体験記と題してご報告せていただきます。

研究室について

私が所属するLHCはDr. Curtを筆頭に5人のPI (Principal Investigator)がおり、肺がん、肝臓がん、膵がん、乳がん、前立腺がんなど様々な癌腫を対象に基礎研究から臨床研究まで行っております。私は肺がんの早期発見を目的としたバイオマーカーの研究に携わらせていただいております。質量分析器を用いて臨床検体から目的のメタボライトを測定し関連解析を行ったり、細胞株を用いて目的メタボライトの代謝、機能解析をチームで進めています。臨床から離れ医学研究の分野に飛び込んでまだ日も浅く、どうすればチームに貢献できるか苦悩する場面もありますが、幸いにも本研究目的は臨床医として身近に感じることができ、楽しみながら取り組むことができています。ラボ構成員は約40人おり、出身国はアメリカ、日本、オーストラリア、アルゼンチン、インド、中国、フランスなどとても多彩です。それぞれ様々な状況で悩み、喜び、たまに愚痴を言ったみたりと、日々の研究生活を楽しんでいます。また月に1回の研究経過をプレゼンする場が設けられており、毎度胃が痛くなりながら準備をしています。当然英語でプレゼンをやりますが、乾燥した口が余計に舌を回らせなくしております。当時月に3回プレゼンしていた岡山先生の胆力には感服いたします。研究室での生活を振り返ると、苦労は尽きません。しかし、それ以上に課題に挑戦していける環境に身を置けていることに感謝しております。毎日地道な繰り返しですが、それがいつか病で苦しむ人々のためにつながると信じて、精進してまいります。

アメリカでの暮らしについて

現在、妻と二人でBethesdaのアパート(NIHから車で5分)で暮らしています。現在は、生活もだいぶ慣れ、お気に入りのスーパーやカフェ、ジャンクフード店、レストランなどを見つけ楽しませていただいております。休みの日には国立公園やスミソニアン博物館、リンカーン像があるワシントンメモリアルなど様々なところに行かせて頂いております。
生活のセットアップでは、幸いにも自動車の購入やアパート契約は順調に進めることができましたが、少々苦労をいたしました。恥ずかしながら、少し紹介させていただきます。インターネットでIKEAの家具を購入したのですが、予定日に配送されず、電話で問い合わせたところ、あなたのクレジットカードは承認されていなく、購入がキャンセルされている状態と言われました。詳しく調べてみると、円建てのクレジットカードは店頭では使用できるものの、web上では使えないということでした。改めて、IKEAに出向き、購入予定のリストを店員に見せ購入と配送希望の旨を伝えました。しかし、直後によくわからない独特な発音の英語でなにかを聞かれましたが、さっぱりわからず、彼の意図を理解するのに10分もの時間を費やしました。今から振り返ってみても、このときが一番コミュニケーションで難解な場面だと思います。しかし、ここはアメリカであります。最後に、「ありがとう!」といってガシッと握手をしてニコッとしてハグをすれば、イライラしていた店員もにこやかになり、「また来いよ」と笑顔で送ってくれます。他にも、社会保障番号を申請・取得するにも時間を要しました。一度目にお願いした担当者の手続きがうまく完了していなかったようで、結局、別の役所で再度申請をしてようやく取得できました。あのニコニコしながら「The process is completed.」といった言葉は一体なんだったのでしょうか。他にも、IKEAの家具を配送してきたトラックの運転手が他の住人と駐車スペースで喧嘩を始めたので止めに入ったり、ドミノピザでは「お勧めはなにか」と聞いたら、「俺が食べるわけじゃないから答えない」と言われてみたりと、日々の生活を楽しんでおります。
アメリカでの日常生活を通して感じるアメリカの自由と自己責任に繋がる寛大さと厳しさなど様々なものを身をもって学べています。有難い事に職場以外での出会いもあり、様々な人と知り合うことができました。研究所以外でできた友人達もとても誠実で優しい人たちが多いと感じます。よく最初の会話でこんなことを話します。日本では外科医をやっていたと話すと、「体調悪いときはYasuに連絡するから診てくれ」とお願いされます。もっともらしく「OK. But all I can do is just to say “please go to a good hospital” 」というと爆笑をいただけます。そうです、日本では失笑ですが、アメリカではちがうことを教えていただきました。
日本国外での生活では日本の素晴らしさに多く気づくができたのも、この留学のひとつの成果だと思います。日本人が持つ堅実さや正確性、清潔感などは日本人としてとても誇らしく思います。一方で、アメリカのダイナミックな考え方、全体を統括するシステム構築(教育や研究)には学ぶところが多いと感じます。
日々の生活の中で楽しいこともありますが、それと以上に悩み、苦労することがあります。しかし、苦労があるから力をつけることができ、日々が充実していき、苦労する人に手を差し伸べることができると思います。何よりも代えがたいこの素晴らしい機会をいただけたことに心から感謝しております。誠にありがとうございます。医師としても人間としても大きく成長して皆様に還元できますよう、精進してまいります。


福島県立医科大学 消化管外科学講座 中島隆宏(2006年卒)

皆様、こんにちは。

2017年12月より海外留学の機会をいただき、カロリンスカ研究所(KI; Karolinska Institutet, Stockholm Sweden)に博士研究員(Postdoctoral Researcher)として在籍しています。留学して間もないのですが、スウェーデン、カロリンスカ研究所、現在の状況そして留学までの経緯についてご報告させて頂きます。

~スウェーデン~

皆様にあまり馴染みがないかと思われますので、北欧スウェーデンについて少し紹介いたします。スウェーデンの国土は45万㎡と日本とほぼ同じですが、人口は約1000万人と多くありません。首都Stockholmは北緯59度(日本最北端が45度)に位置し、アメリカのアラスカ州やカナダと同じ緯度になります。-20℃ぐらいになることがあるそうなのですが、近年は温暖化の影響を受けて平均気温は-5℃前後なのであまり福島の真冬と変わりません。吾妻おろしのような強風がないので体感温度は比較的暖かい印象です。しかしながら、一番の問題は日照時間が1か月で合計30時間程度しかなく、いつまでたってもずっと暗いことです。そのため、灯りに対する価値観が高く、各家庭でろうそくや間接照明を多く飾る習慣があります。中世の街並みが残る国として有名ですが、それらが相まって非常に美しい景観をみることができます。

~カロリンスカ研究所~

カロリンスカ研究所は、福島県立医大と同じく単科の医科大学です。ノーベル医学賞、生理学賞の選考委員が置かれていて、受賞記念講演も行われるようですが、私は聴くことができませんでした。研究組織は20-30の部門があり、私が在籍しているのはDepartment of Oncology-Pathologyです。当研究室を主催するRolf Kiessling教授は、NK細胞の発見者の一人で、癌免疫の分野を牽引しています。研究所は、敷地内のCancer Center Karolinskaというビルの1フロアを他グループと共有しています。教授をはじめ数名の研究指導者が在籍していますが、スタッフの多くはPhD student、Postdoctoral researcherそしてMaster studentです。当然地元のスウェーデン人が多いのですが、私の周りだけでもアメリカ、スペイン、ドイツ、イギリス、インド、マレーシア、中国と多くの国から人が集まっています。ほとんど英語でのコミュニケーションですが、簡単な挨拶などはスウェーデン語を用いています。研究については、詳細は割愛しますが酸化ストレスによる免疫抑制に抵抗する細胞の確立とメラノーマの患者血液サンプルを用いたプロジェクトが動き出したところです。

~留学まで~

さて、この度カロリンスカ研究所へどうして留学することが叶ったのかというと、河野教授より多大なるサポートをいただけたからになります。ご存知の方も多いと思いますが、河野教授はカロリンスカ研究所へ留学の御経験があり、医学博士も取得されています。Rolf教授とはその時以来、深い親交があると伺っています。河野教授のおかげ?でしょうか、Rolf教授をはじめ研究所のスタッフは皆日本に好感を持っている印象を受けます。こちらでもよく福島(震災のことはみんな知っています)はどういった状況か、河野教授は元気かなど日本のことをよく聞かれます。日本の話がでてくると、私も少し肩の力が抜けて話しやすくなります。ところで、StockholmはちょっとしたSushiブームで、いたるところにSushi Barがあります。ほとんどはEuropean styleで派手な巻物ですが、ちゃんとした握り寿司も食べることができます。値段は高めですが、個人的にはおいしいと思っています。

今回の留学の準備で多くのことに苦労しましたが、Stockholm特有でしょうか、最も苦労したことについて少し触れたいと思います。あまり知られていないと思いますがStockholmは住宅事情が非常に厳しく、数が少なく、家賃も高いということです。そのため学生達が構内でストライキを起こすぐらいだそうです。研究者用の寮へ申し込んだのですが、26か月待ちと返答があり愕然としました。しかたなくインターネットで地元の不動産会社を検索し、空いている物件を探しました。やはり空いているのは市街地から離れた場所か、家賃の高い物件しかなく、どうにかして2LDKの築100年のアパートを借りることができ、ようやく出発の準備が整いました。
そしてようやくSwedenに着いたと思いましたが、すぐにトラブルが待ち構えていて、なかなか思ったようにことが運んでくれない日々を送っています。日常生活でのハプニングや研究の進捗など、いずれ機会がありましたらお伝えしたいと思います。

最後に、河野教授をはじめ医会の皆さま、スタッフ、そして福島県内の各施設の関係者の方には、この度の留学にあたり多大なる協力をいただき本当に感謝しております。引き続き、全力で臨む所存です。あたたかく見守っていただければ幸いです。

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