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福島県立医科大学 消化管外科学講座

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留学体験記2022

Laboratory of Human Carcinogenesis, NIH 山田 玲央

1月中旬に医大で講演された、National Institutes of Healthのカートハリス先生の教室に留学中の山田玲央です。昨年の6月に留学させて頂いてから、早いものであっと言う間に半年が経過しました。「最初の半年は特に時間の流れが早いよ」と言われていましたが、実際研究室内でのセットアップや研究内容の選定に加え、アメリカで生活するにあたり個人番号や運転免許証の取得…etc.と気付くとあっという間に時間が過ぎてしまいました。

ちょうど渡米したタイミングが1ドル150円付近のレートと数年前からの物価高、家賃上昇による影響真っ只中となってしまいましたが、幸い友人のつてで、FDAやNIHに出向中の日本人が代々入居してきたシェアハウスに格安で入ることができ、学生生活で経験しなかった寮生活のようなものを楽しみながら毎日研究室に向かっています。

研究室は30-40人程度を抱えている大所帯なせいもあり、比較的まったりとした雰囲気で週1回の少人数でのミーティングと1-2ヶ月に1度の全体ミーティングのプレゼンを除いてほとんど拘束がなく、それぞれ思い思いのペースで研究を続けています。基本的にはプライベート・家庭を重視して、やるべき仕事を終えたら、だらだら研究室に残らず17時ごろにはサクッと帰る形が一般的ですが、限られた時間の中で効率的に働き、かつ相談事にも協力的な姿勢を見せてくれる研究室のポスドクやスタッフには見習うべきところが多いなと思います。

研究面では、カート先生が昔から研究されてきたp53のチームに配属されており、p53のisoformと老化の関連性をテーマにした研究に従事しています。具体的には、臨床応用に進む前段階として、遺伝子導入したマウスを使って老化細胞を賦活化させるp53 isoformの効果を実証する研究を行っており、充分な効果を確認した上で今年中に、既に確立している早期老化症のProgeriaマウスと交配して、予後延長に対する効果をみるという工程で研究を進めています。

一見すると消化器や癌系統の話から離れているように見えますが、マウスモデルや臨床応用に対する理解を得られる貴重な機会であると共に、疲弊した免疫細胞を賦活化させることで、癌免疫治療を含めた消化器癌の治療・研究にも繋げられる可能性も秘めているため、ある程度の期間はかかりますが非常に浪漫があって従事し甲斐のある研究テーマだなと考えています。こちらに関しては引き続きNIHでの研究生活を楽しみ、今後またいい御報告ができたらと思います。

最後に今後留学を考えている先生方に対して

仕事ですので、短期の語学留学みたいなキラキラした留学とは全く異なり、時にはムカつくことやストレスがかかる時期もあります。お金はかかるし、先行きの見通しは難しいし、日本で医師として安定的に働いていた方が良かったんじゃないかなーと思う時も正直ありますし、留学を選択すること自体は小利口でコスパの良い人生を送ることには全く繋がらないと思いますが、人生一度きりだし創造的なことにチャレンジしてみたい、これまでの人生で味わったことのない経験をしてみたいという先生にとっては昔と変わらず良い選択肢となるのではないかと思います。

現在医局で提示して頂いているアメリカ、スェーデン、シンガポールの留学先は通常倍率が高く、応募しても採用される可能性が低い希少価値の高いところばかりです。
医局の先人たちが切り拓いてくれた魅力的な留学先で、論文をただ読むだけじゃ味わえないライブ感を1人でも多くの先生方に今後経験していただけることを願っています。


カロリンスカ研究所 留学体験記 松本 拓朗 (2012年卒)

お世話になっております。
私は2021年12月に渡欧し、スウェーデンのカロリンスカ研究所(KI)で基礎研究に従事させて頂いております。日本を離れて1年が経過しましたので、現状をご報告させて頂きます。

研究について

私は、ポスドクとして3つのプロジェクトを掛け持ちしています。1つ目は、メラノーマのネオアンチゲン予測に関して、2つ目は、卵巣癌サンプルを用いての免疫細胞のphenotypic analysisおよびdrug screening, 3つ目は、癌細胞における酸化ストレス抵抗性の阻害と免疫原性細胞死との関連についてです。手術検体のサンプル処理、細胞培養、実験、多数のミーティングなどで日々忙しく働いています。

ラボについて

KIは、世界的な医学系研究機関であるため、世界中から多数の研究者、学生が集まっています。毎週、複数回のセミナーがあり、各分野のスペシャリストの講演を実験の合間に聴講することができます。最先端の研究を学ぶには最適な環境といえます。
ラボのフロアーでは、相変わらず単独の日本人として生活しています。私以外はみんな英語を流暢に話しますが、様々な国から来ているため文化の違いの話題が出ることが多く、考え方も異なるため会話していると面白いです(ドイツ人はきっちり、フランス人はどこかセクシー(男ですが)、スウェーデン人は緩い感じ、などの印象)。同じヨーロッパでも当然食文化も違うし、クリスマスなどの行事も異なります。日本に興味を持ってくれる方も多いのですが、日本のイメージは、Sushi、Anime、Mangaあたりでしょうか…。ヨーロッパ人は、アジア旅行と言えばタイですので、日本は思ったより知られていないようです。本当の日本を知って欲しいため、啓蒙活動を頑張ります。

生活について

元々の北欧の物価にプラスして世界的な物価高ですが、スウェーデンでのfellowshipを戴けることになりましたので、少しは生活にゆとりが持てるようになりました。
臨床医では無いため、土日はお休みです。また年間28日間の休暇が取れるため、プレゼンや実験で忙しくない時には、休みをもらって遊びに出かけることができます。ヨーロッパに住む最大のメリットは、シェンゲン協定国内であれば、パスポートの提示もなく海外旅行が気軽に行ける点があります。年末はバルセロナに出かけましたが、スペイン人大学院生に予約してもらったレストランに行ったりして楽しめました。様々な国の人がいるので、旅行の度に現地の情報が得られるのもメリットです。日本人は多くありませんが、仲の良いご家族と遊びに出かけたりなどしています。平日は忙しいため、土日はなるべくリラックスして楽しめるようにメリハリをつけて生活しています。

英語について

何を行うにも英語が必要なので、留学において1番重要かと思います。私は語学が苦手なので、かなりのdisadvantageとなっています。逆に言えば、英語が出来つつ、日本人の勤勉さがあればどんな環境でもなんとかなると思います。留学希望のある先生は英会話のトレーニングを積んでおくことを強くお勧めします。留学された先生のお子さん達は、自然に英語やスウェーデン語が身についているようですので、語学を身につけさせたい場合には是非。

まとめ

海外研究留学は、辛いことも楽しいこともあり、かなり濃密な時間を過ごしています。研究はすぐに結果は出ないので焦りますし、英語は思うほど上達していません。しかし、これほど時間を使って研究に集中できるのはありがたく思っています。積極的にディスカッションできるフラットな関係性や、家族を優先した働き方(何かあれば休みを取り、他のスタッフがサポートする)もとても良い環境です。仕事面でも生活面でも勉強になることを多く、このような留学機会を提供して頂いたことにとても感謝しています。あと1年弱、こちらで研究を続けさせて頂く予定ですので、出来るだけ多くを吸収して帰国できるように充実させていきたいと思います。

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