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留学体験記2020

福島県立医科大学 消化管外科学講座 多田武志(2006年卒)

アメリカでのCOVID-19と留学生活

2019年4月からアメリカメリーランド州、National Institutes of Health(NIH)にある、National Cancer Institute(NCI)所属Laboratory of Human Carcinogenesis(LHC)部門に海外留学に来ています。2021年3月末、日本への本帰国を間近に控え、研究内容と、COVID-19パンデミックなどで様変わりしたアメリカでの生活について報告いたします。研究の内容は、肺がんを中心に、肝がん、頭頚部がん、胸膜悪性中皮腫患者などの生体試料(尿検体、血液検体)を質量分析器で解析し、その代謝産物の測定および解析をすることです。

これらの代謝産物が、各種がんの早期発見、予後予測バイオマーカーとして応用できることを目的としています。私は、肺がん患者試料の測定解析を担当しています。ひとつのプロジェクトは、喫煙歴の有無に着目した肺がん発生率を、代謝産物の値を用いて検討することです。その他には、肺がんStage I & IIのコホートにおいて、代謝産物のHigh群とLow群で癌特異的生存率に差があることを検討することです。
これらの検討は大詰めを迎えており、現在、論文にまとめているところです。福島に戻ってからも、この研究内容を消化管癌にも適応して行く予定です。

写真1.質量分析器が置いてある部屋

2020年は、COVID-19ですべてが変わりました。2月末までは、アメリカ国内では対岸の火事といった様子でしたが、3月になると状況が激変しました。1年に1回行われるLHC主宰work shopが直前に中止になり、3月15日にラボに行くと、上司からすぐさま自宅に帰るように言われ、指示があるまでリモートワークだと言われました。その日からNIHはロックダウンになり、ラボに行けるようになったのは3か月後の6月22日でした。その後も、暫くは短時間のみの滞在、大きな実験はしないように通達され、本格的に実験を再開したのは8月になってからでした。リモートワーク中のミーティングはすべてZoomで行い、年が明けた2021年でも継続しています。

写真2.ラボメンバー集合写真 Zoom

写真3.マスク着用を促すポスター、ラボ内の一方通行の矢印、注意書き

私生活の面でも大きく変わりました。いわゆるロックダウン期間中の3月から6月は、週一回の生活必需品の買い出しと、気晴らしのための公園に遊びに行くことしかできませんでした。子供たちは3月以降一度も小学校には通っておらず、完全オンラインで授業を受けています。また、今年はBlack Lives Mattersでの抗議活動、大統領選をめぐる抗議活動もあり、緊張感を強いられる場面が続きました。アメリカではCOVID-19新規陽性者数が20万件/日報告されるような状況です(2021年1月現在)。幸いにも、近しい日本人の知り合いやラボメンバーで陽性および重症者はいませんが、いつ自分たちもと思うと不安です。ワクチン接種が開始されていますが、アメリカ全土に普及するにはまだまだ時間がかかるようです。COVID-19パンデミック前後の2年間をアメリカで過ごし、その違いを実感することはできましたが、当初思い描いていたようなアメリカ留学生活ではなくなってしまいました。気分的に落ち込むこともあり、リモートワークでは仕事が手につかないことも多くありました。しかし、家族やラボの同僚、日本人の友人たちと支えあいながらこの難局を乗り切ることができました。

写真4.自宅でのオンライン授業、平和的抗議活動のチラシ、同僚との食事会

この度、留学の機会を与えて下さった河野教授をはじめ、歴代留学経験者の諸先輩方、および医局の先生方にはこの場を借りて感謝申し上げます。今後留学希望の後輩たちにとっては、不安を与える内容になってしまったかもしれません。本当に強い志ををもって留学に臨むことをお勧めします。私が留学期間中に得た経験を、医局全体の大いなる発展に活かしていきたいと思います。

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