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福島県立医科大学 消化管外科学講座

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癌に対する集学的治療の成績向上のためのTranslational Research

消化管外科学講座は、食道から肛門までの消化管疾患の外科治療を専門とする講座で、患者さんの98%は癌患者さんです。したがって、最適な外科手術を提供することが第一ですが、同時に、抗癌剤、放射線照射、免疫療法を駆使した集学的治療を展開し、癌治療の向上を命題としております。そのため、癌の病態を詳しく理解し、最適な集学的治療に直結できるようなTranslational Research(TR)を展開しています。具体的には、手術摘出検体などの臨床検体を対象とし、腫瘍免疫学+分子生物学+Bioinformaticsの手法を駆使し、下記の重点テーマでTRを実践しております。

①消化器癌における癌免疫療法の開発

近年の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を用いた癌免疫療法の進歩は著しく、癌治療体系を変えるインパクトを与えています。そこで、我々の研究室では、ICIの標的分子であるPD-L1の、消化器癌における発現調節機構を解明すべく、IFN-gammaなどの免疫応答の観点、Epithelial Mesenchymal Transition(EMT)の観点、microRNAの調節機構の観点(2017年癌免疫外科研究会奨励賞受賞、図1)から、腫瘍免疫学と分子生物学の手法を用いて、多方面の観点で深く掘り下げています。その結果は、ICIの作用機序の解明、効きやすいsub-groupの同定に還元され、臨床成績の向上に役立ちます。
また、さらなる免疫療法の向上のため、複合的免疫療法の構築を行っており、放射線照射と癌免疫療法の併用療法の作用機序(Immunogenic tumor cell death、図2)の解明を行い(放射線腫瘍学 鈴木義行教授との共同研究)、新規治療体系の構築を実施しております。すなわち、放射線照射とICIの併用(サーキット試験、図3)など、福島医大オリジナルの癌免疫療法の臨床試験、臨床研究を展開中です。

②大腸癌の予後バイオマーカーの同定

病期II、IIIの大腸癌では、術後再発予防目的のアジュバント化学療法の適応に未解決の問題も多く、特に抗癌剤投与が必要な再発高危険群の同定が必要です。すなわち、病期IIとIIIにおける再発高危険群の絞り込み、個別化が必要と言えます。そこで、我々の研究室では、Bioinformaticsの手法により、Public databaseから、絞り込みに有用なバイオマーカー候補を検索し、さらに、分子生物学手法によりその候補分子の機能解析を行い、さらに、実際の手術摘出標本を用いて、個別化の実証性を検討するPipelineが完成しております。このPipelineにより、有力なバイマ―カーが数種類同定されており、実用化を目指しております(特許出願済み)。

上記に加え、「食道癌の術前化学療法中、あるいは手術時における血中遊離癌細胞(CTC)の臨床的意義」「腸内フローラと腫瘍浸潤リンパ球の相関」など、すべての研究テーマは、臨床の問題を基礎的手法で検討し、再び臨床に還元するTRを実践しております。豊富な海外ネットワークを利用し、国際共同研究や海外留学(2名)を積極的に行っており、世界を視野にいれた臨床研究を目指しております。

外科医にとって、高度な手術を提供することがすべてに優先されることであり、その修練に全精力を注ぐことに論を待たない。と同時に、外科治療は、論理的に物事を考え、実践するアカデミズムに基づくことが必要であり、我々はAcademic Surgeonになるべく修練しております。

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